がんばらない。でも、あきらめない
伊達屋酔狂
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サヤは今日も電車に乗って病院へ、リハビリに通っている。
事故から8ヵ月余り。車椅子から離れて、松葉杖をつきながらでも歩けるようになったのは、彼女の滲むような努力の結晶だ。
階段にさしかかると息を止め、転ばないようにゆっくりゆっくり足を前に出す。
ぎこちなく歩くその姿は、はた目からして見たら痛々しくも映る。
でも、サヤはそんなことはおかまいなし。
むしろ自分の足で地面を踏みしめ、おとといより昨日、昨日より今日、少しづつ歩幅を広げて歩けていることに、喜びと誇らしささえ感じて進んでゆく。
一歩一歩確実に。
疲れたら少し休憩して、また歩き出す。
「よう。元気そうじゃん」
「オマエもな」
「これからリハビリか?がんばってんなぁ」
「あたしはがんばらないの。がんばらないけど、あきらめない。絶対に…」
「おー☆カッコィィねぇ。ま、せいぜいがんばんな」
「オマエこそがんばんな☆」
冬のはじめのやわらかな陽射しが、アスファルトの上に、オレとサヤのふたつの影を躍らせていた。
06.11.01 了
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