ふしぎなはなし*其ノ壱 【天よりきたるもの】

伊達屋酔狂

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作家、澁澤龍彦は意外なところから、この物体の正体が何であるかを指摘した。

イギリスの劇作家、シェークスピアの『リア王』や『ロミオとジュリエット』の劇中に、これと同じものが出てくる。というのだ。
その中でこの物体は『ゴッサマー』と呼ばれ、軽くてフワフワと浮いている様子が、恋する者の喜びの心情に喩えられている。

かといって『ゴッサマーだ』などと言われてもなんだかわからない。早速調べてみると、辞典には『飛行蜘蛛』と書かれていた。

飛行機雲ならわかるが
…ヒコーグモ??

辞典にはまた「穏やかな秋の日などに空中を浮遊するクモの糸、または固まり」とある。
なるほど。江戸時代の大坂庶民が見たものは、このクモの糸だったのだ。

クモには羽根はなくとも、空高く飛んで遠くまで移動する能力を持っている。
植物の穂先、木々の枝の先端、家屋の軒先などに立ち、上空に尻を向けて糸を噴出する。空に向かってどんどん伸びるクモの糸を、やがて上昇気流が巻きこみ、クモを身体ごと空中へと舞い上げる。そして上空のジェット気流に乗り、彼らは新たな地を求めて移動する。
風のない穏やかな日中でないと糸は空高くまで昇っていけないため、この現象は初春や晩秋の限られた日にしか見られないという。




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