水色の空

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カオス・ストーリー23
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――なんなの?この人。

「・・・あの、いつからここにいるんですか?」

菜摘子は平静を装って、ひどく落ち着いた口調で言った。

「いつから、って・・・」

男は少しわざとらしく口を曲げ、困ったような顔を作り、アスファルトの床を指差しながら言った。

「ナツコがココに来た時、か、来る前、とか?」

「・・・なっ!!」

装ったはずの平静さが、音を立てて崩れていくのがみえた。


――見られていた!!!


理由もなく無気力で、何もかもがつまらないと感じ、ただ制服に身を包み、教室へも行かず、
屋上でたった一人、嗚咽を漏らしていた全てを見られていた。

今さっき初めて会ったばかりの男が、何故自分の名前を知っているのかという事よりも、
屋上へ来てからの自分を、誰かに見られていたという事が菜摘子の冷えきって滞っていた血流を
一気に体中へ巡らせた。

男は、やや薄い唇の両端を持ち上げ、小さく笑う。

「いや、俺がソコで昼寝してたら物音がしたもんだからさ。
 誰かと思ったら、ナツコなんだもん。」

“ソコ”と指差したのは菜摘子が開けた扉の、更に上に付けられている貯水タンクの脇だった。
菜摘子は扉を開けて周囲の確認はしたが、自分の頭の上までは見なかった事を悔やんだ。
男はまだ寝足りないのか、大きく欠伸をして目を擦っている。

――寝ていたのなら、独り言や泣いていた事までは知られていないかもしれない。

菜摘子は小さな安心感を得ると共に、何故この見知らぬ男が自分の名前を知っているのか
(しかも、馴れ馴れしく呼び捨てなのか)を知りたくなった。

「ねぇ―――」
「なぁ、メシ、食うべ。俺マジ腹減ったんだけど。」

――ねぇ、なんで私の名前知ってるの?
と、言う前に、男は菜摘子にコロッケパンを差し出し、自分は既に焼きそばパンを頬張っていた。

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