水色の空
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「つまらない。」
小さな溜息混じりに、菜摘子は呟く。
くるりと身を返し、フェンスにもたれ掛かった。
細い針金の網目が、軋んだ音を立てて僅かに歪む。
もし、今誰か屋上にいる菜摘子に気付いて見上げたなら、
スカートの中へ淡い期待を抱いたに違いない。
「つまらないのよ・・・っ」
もう一度、
今度は何かを吐き出す様に、
何かに投げつけるように小さく叫ぶと、
菜摘子は熱いアスファルトの上に膝から崩れ落ちた。
身体を折りたたみ、
制服が汚れるのも気にせず突っ伏し、
スカートと同色のブレザーに包まれた小さな肩を小刻みに震わせながら、
ひたすら嗚咽を漏らし続ける。
水色の空は、一人崩れる菜摘子を見下ろしていた。
グラウンドからはボールを追いかける音と、男子生徒の笑い声が響き、
校舎の四角い窓からは、淡々と指導書通りに授業を進める教師の声が聞こえてくる。
この学校にいる誰一人として、今、菜摘子が一人屋上で泣いている事など知る由も無かった。
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