水色の空
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12ページ目
「どうする?」
裕人が言った。
どこに隠していたのか、いつの間にか靴を履いている。
授業に出るつもりか、家に帰るのか、このまま屋上に留まるのか。
それとも―――――。
菜摘子は何も言わず立ち上がると、
握ったままだったコロッケパンが入っていたビニール袋を丸めて、裕人に渡した。
そしてすっかり埃に塗れてしまったスカートを掃い、乱れたままだった黒髪を整え、
様子を伺っている裕人を背に歩き出した。
「いくわ。」
どこに行くかは答えなかった。
裕人は自分の食べたパンが入っていたビニール袋と空っぽになったペットボトルを持つと、
菜摘子について歩き出した。
それが、ごく当り前のように。
両手の塞がった裕人の代わりに、菜摘子が灰色の鉄の扉を開ける。
耳障りな錆びた音が響く。
裕人が先に中に入り、菜摘子が続いて足を踏み入れる。
ドアが閉まる直前、細長い隙間から、錆びた水色のフェンスの外を見た。
―――どこまでも水色。
重い灰色の扉が、静かに閉じた。
人影が消えた屋上には、そよ風が吹いている。
夏はもう、すぐそこまで来ていた。
***≪完≫***
拙い文章を最後まで読んでくださって有難う御座いました。
懲りずに次回作に取り組んでいますので、いつになるかはわかりませんが、
投稿した際にはどうぞそちらもよろしくお願いします。
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