Hard Day's Nights

水瀬

LaZoo掲示板
カオス・ストーリー23
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「こうやって両側から鉛玉をぶちかましたら、破片はどっちの方へ吹き飛ぶのかなって私はよく考えるわ。だからいつか試してやろうと思ってたんだけど、こうも容易く機会が訪れるなんて、この《仕事》してて初めての喜びだわ」
平泉イズミはデザートイーグル二挺で相手の頭を挟みながら宣った。
デザートイーグルとは、通称《ハンドキャノン》と呼ばれる、世界最強と銘打っても差し支えないハンドガンの一つである。
なんたってハンドガンなのに50AE弾を使用するから、もはや化け物だ。
「アァン?おいおい嬢ちゃん。誰にモノ言ってるのか理解してんのか?ダーティ・ハリーじゃあるまいし、んなモノお嬢ちゃんの細腕でブッぱなしたら肘からもげちまうぜ?」
男は下卑た笑いを浮かべた。本人はカッコつけてるつもりなのだろうが、拳銃で頭を挟まれた状態で言われても、って感じだ。
イズミは《お前どう考えても、ただそれ言いたかっただけだろ》的なことを言おうかと思ったが、メンドイからやめた。―――が。
「あなた、息臭いわよ?少し黙りなさい。二秒黙れば死ねるから」
なんだかムカついたから早めに殺そう。
「あァン?なに言ってやがるアマ。下手に出てればつけあがりやがって」
男の、デザートイーグルに挟まれた状態であるのに全然緊張感など感じさせない態度にイズミはかなりムカッとした。
完全に撃てないとたかをくくられ、なめきられている。
それに、どこが下手なものか。
むしろつけあがってるのはあんたの方で、あたしこそが下手に出てあげてるっていうのにつけあがりやがって、なに調子くれてるのかしらコノヤロ。やっぱりすぐ殺そう。ストレスが溜る。
「俺が一声かければ何十ってぇ仲間が二秒とかからず集まるぜぇ?そうなったら嬢ちゃんなんかヒィヒィ言わされんぞ?ブチ壊れち―――」
―――轟音と呼ぶに相応しい銃声が重なって響き、男の頭が吹き飛んだ。
破片は《前後左右》では補えきれない程に飛び散り、撃った本人に一番降り注いだ。
そして撃たれた男には、肩から上に抉られた断面のある首だけが残った。
「キショイわ、あんたのセリフというか口から出る全てのモノ以前にあんたが」
イズミはスカートに付いた肉片を汚らしいモノを触る手付きで払い落とし、こびりついた返り血をどうしようかと悩む。
こんなことになるなら、普通に前から脳天ぶちかませば良かった。
「それにどうしてくれんのよコレ。気に入ってたんだから」
それは理不尽にもほどがある。自分で汚したも同義なのに。
彼女はパステルピンクのワンピースを着ていた。
膝丈まであるそれはさっきまでの《仕事》をするにあたっては不向きな気もするが、彼女にとってはあまり関係なく動けるので問題など皆無だ。
何よりこの服かなり気に入ってたし。今日初めてコレを見たときは運命のようなモノも感じさえした。これってあたしのためにあるわねって。
というより、元々このワンピースは彼女の所属する《》が彼女のためにオーダーメイドしたモノであり、着用者の趣味趣向にそって仕上げられている。
だが、例外もあり、この前は支給された服の中に《ウエディングドレス》があったので着てみたのだが、思ってた以上に動きにくくて膝を擦り剥いてしまったことがある。もちろん《仕事》は完遂した。
「―――い、イズミちゃん、私を置いてくなんてヒドイじゃないですかっ!?」
背後から声がして、イズミは振り返る。
そこには全体的に白と青を基調とした服にプリーツスカート、いわゆるセーラー服を着た少女が顔を真っ赤にし、ぜぇぜぇと荒い呼吸をしている。
彼女の左手には不釣り合いな日本刀が握られていた。
しかもただの日本刀ではなく、刀身が2mもありそうな太刀だ。
「だって、ソラがトロいからイケナイんでしょうが」
美空ソラ。
イズミの同僚であり、現・相棒である彼女は、イズミの趣味により無理矢理セーラー服を着用させられていたのであった。
「なっ!?なに言ってるんですか!?イズミちゃんが勝手に先行したんですよ!だから、私には何も責められるトコロもありませんし、言われもありませんから!」
「うっせ」
がつん、とソラの頭をデザートイーグルでこづく。
一挺で2kgもあるデザートイーグルの一撃である。軽い脳震盪を起こしても不思議ではないのだが、ソラはそんな一撃など意も介さず、ぴんぴんと抗議の声をあげた。
「い、痛いですよー!?」
頭を押さえてうずくまるソラ。
「・・・・・・・あんたさっきから《エクスクラメーション》と《クエスチョン》使い過ぎ」
「なに意味分かんないこと言ってるんですか?」
実は言ってる本人もよくは理解していない。
「あー、もうイイ。とにかく引き上げるわ」
デザートイーグル二丁を腰の左右にあるホルスターに収め、イズミは階段目指して歩き出す。
「う、わわわっ。待ってくださいよーっ」
「早く来なきゃ置いてくよ」
ソラは駆け足でイズミのあとを追って階段を降りる。日本刀を左手に持ったままだったから、階段の一段毎にガギガギと不快な音を立てたが気にするそぶりすら見せなかった。
そもそも彼女は太刀を収める鞘を持っていなかったのだから仕方がない。
階段を一階分降りたイズミの後方より何かが落ちてくる音が聞こえてきた。
ドンガラガッタン!!
キャー!?
「・・・・・・・・・・・・・・」
イズミはそれを無視してまた歩を進める。
今回もおおむね成功だ。
・・・・・・・そう思っておこう。


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