憑いてくる

はつこ

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カオス・ストーリー23
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私は、どちらかといえば『そういうモノ』に疎い方だった。
だから彼女の存在に気付いた時も、最初は信じてなどいなかった。




それはまだ春とはとてもいえないような肌寒い3月。いつも通りの混み合った電車に乗っての通学。
ぎゅうぎゅうと周りに押しつぶされそうになりながら、少しでも楽な姿勢をとろうと体をひねる。そこでふと目がいったのが『彼女』だった。
少し離れた座席に座っている、私と同い年くらいのセーラー服の少女がいた。その少女の何が私を惹き付けるのかは解らない。けれど目を離すことができなかった。
結局私が電車を降りるまで、その少女も下車することはなかった。
私は電車を降りて学校に向かって歩いている途中も、彼女のことを考えていた。
肩につく黒すぎる程の真っ黒な髪も、満員電車のくすんだ空気の中に不思議に輝く白い肌も、頭に焼き付いたまま離れることはなかった。

次の日の朝も、彼女は昨日より少し私に近い席に座っていた。
おかげでさらに彼女をよく見ることができる。そんなにじろじろ見られたら不快だろうということは解っていたが、目を離すことはやはりできない。
改めて見てみると、なんというか周りからきりはなされたようにどこか浮いた感じのする子だ。まるでぼんやりと身体が光っているように。
昨日見たのと同じように、1本のくせもなく真直ぐに肩にかかった髪。
どんなに整えてもはねるくせの強い髪の私には、うらやましい限りだ。人形のように整った顔は、どこか寂しそうに俯いたまま、一度も顔をあげることはない。私の視線はちっとも気にならないのだろうか。目が合ったら困るくせに、彼女の顔を前からよく見てみたいという矛盾した思いが頭をかけめぐっていた。
あっという間に停車駅についてしまい、電車を降りるまで彼女にずっと視線をむけたままホームに出る。
もう一度彼女の後ろ姿だけでも見ようと、ふりむいて電車の中を覗くが、彼女の姿が見当たらないままで電車は発車してしまった。






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