無限回廊1
エッチな官能小説集
「遅くなっちゃったな……」
深い暗い森の中、聞こえるのは、不安気に呟く少女の声。
その少女は、郊外の森の奥深くで小屋を持ち、独りで暮らしていた。
今は亡き親の残した家であり、大切な思い出の詰まった場所だから。
森は少女に、様々な恵みを与えてくれる。
食物や薬、資材。
生きていく上で最低限必要とする物は、大抵事欠かない。
家の裏では畑を作り、夜には部屋で布生地を織り上げる。
揺れる暖かなランプに照らされて――その生地は美しい七色に輝く。
少女の布は、町での評判がよい。
それを売ることで稼ぎを得る。
この日も、町で布を売り捌き、帰宅するはずだった。
しかし、町中での人々の噂に気を取られる内に、
いつもなら荷をまとめる合図である夕刻の鐘を聞き逃し、
帰路につく時間を遅らせてしまった。
噂というのは、この世界ではごく当たり前の存在である、魔物に関することだった。
この町に向かうはずだった旅人が魔物の餌食となり、
無惨な姿で発見されたという――。
この付近での遭遇はあまり聞かない話だが、
最近は魔物の行動が活発になっているらしい。
日の出ている内はともかく、
夜は絶対に一人で出歩かないよう――、国からのお触れも出ていた。
帰り道、少女は不安で一杯だった。
事情を説明して宿を取り、明け方に帰宅することも出来たのだか、少女はそうしなかった。
今はそれを激しく後悔している。
暗い森の中、独りで歩くのはなんと心細いことか。
小走りになりながらも周囲をくまなく警戒し、少しでも早く家に帰り着こうとする。
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