人形?/迎夢のエッチな官能小説
人形?
エッチな官能小説集

何かに押し出されるように、愛液が流れ出る。千佳はショーツを脱ぎ捨て、ベッド下に落とす。人指し指をクリトリスにあてがい、中指を第2関節まで、埋め込む。中指をそのまま軽く曲げ、膣上を強く擦る。泣いて喜ぶ人に様……愛液が誘い出される。指先に力を入れ、真直ぐに伸ばす。焦らしは終わり、とばかりに膣内を激しく揺する。

オレンジ色のルームライトに、指間に溢れる愛液が淫らな音が浮かび上がる。腰が、意識を捨ててうごめく。ねっとり、秘肉が指に絡んでくる。流れ出た一筋の愛液が、シーツに届く。体を横に寝かせ、両足で手首を挟み込み、指先を送り込む。閉じた目に、彼の影が浮かぶ。澄ました耳に、彼の声が囁く。再び降り出した雨の音と、千佳の淫らな秘音が、遠く重なっていった──。

翌週末に、壊れたパソコンが修理を終え戻ってきた。立ち上がる時間が、長く感じる。起動を確認すると、即座にメールチェック。見なれたアドレスが羅列される。

 “後で読めばいいかな”千佳がインターネットを始めようとした瞬間、羅列されたアドレスの中に、憶えのないものが目に止まる。

  “?”クリック。件名に<よく頑張りました>の文字。メールを開く。

  「本日は御来店頂き誠にありがとうございました。雨の中、しかも自転車で来て頂いたのに、MACの席が使えず申し訳ありませんでした……」

  千佳の胸が一つ跳ねるように脈を打つ。
  「本当はこういうこと、してはいけないのですが……(汗)」
  彼の声で、読む。もう、消えてしまいそうな記憶を懸命に手繰って──。

「閉店後に清掃をしながら、なんとなくPCのチェックをしていたら、あなたの開いていたホームページのウRLが残っていて、つい読みふけってしまいました。素敵なホームページですね。お友達も楽しい方ばかりで。つい、カキコミなんてしてしまいましたよ」

  千佳は急いで自身のホームページをモニターに開く。掲示板、掲示板……鼓動が大きくなる。日を追って遡る。

  「雨の中、自転車に、傘差して必死に走るコを見ました。彼女のあの一生懸命な力は何のためだったんだろう?誰のためだったんだろう?ここに来て、その答えがなんとなく?分かった気がします。女は強し!―瑞樹―」

  くすぐったい赤面が千佳の体温を上げた。思い出したように、千佳は慌ててメール画面に戻った。

  「管理人へのメールを見て、思わずメールしてしまいました。ごめんなさい。お店には内緒でお願いします。なんせ、アルバイトの身なもので。―瑞樹―」

  み、ず、き……。ためらう間もなく、千佳は“返信”をクリックする。そして、止まる。何を返事しよう?どう、返そう?鼓動が耳の裏で聞こえる。何度も書き直しては、ありきたりのお礼。ただ、「またメール下さい」の文字だけは、迷うことなく、指がキーボードの上を跳ねた。力強く──。

  “送信”を押す真際になって千佳は気付く。このまま送信しては、店のパソコンに送られてしまうことを。瑞樹のメールの最下部に記された、自宅のアドレスに慌てて打ち変える。送信後、肌に薄い汗が浮かんでいることを、千佳は気付いていなかった──。

  2日後。瑞樹からの返事。千佳、即、返事。翌日、瑞樹から──。二人のやりとりは、毎日の日課となっていく。まだバイト生活なのは、会社を辞め最就職するまでのつもりが、店長候補として認められ、自身でも困惑しているから──。

  30才で、独身。学生時代は、水泳をしていたこと。互いに聞き、互いを知り、瑞樹にひかれていく自分を、千佳はもう自分でも気付いていた。ただ、彼女の有無だけは明確に答えない瑞樹に、微かな不安を抱きはした。



  ただ、改めて店に行き、瑞樹に会い、会話を交わすと、どうしようもなく愛しさは膨らんだ。やがて、瑞樹のバイトが終わるのを店の外で待ち、一緒に歩くことも増えた。シフトの都合で、会える時間は限られてはいたけども──。

  桜の花が例年より早く咲き始めた、3月の終わり。週末。ネットカフェは、ほぼ満席に近い盛況ぶりだった。約束の時間は、PM9:00。店の外で、千佳は明るい夜空を見上げて時間が過ぎるのを待った。

  携帯。メール。瑞樹を知らせる着信音。
  「バイトが一人遅刻なんだ。ごめん。もう少し待って!ゴメン」

  何故だろう?愛は、退屈すら、満ち足りた時間に変えてくれる。千佳は、顔文字で笑顔を送り、瑞樹を待った。結局、瑞樹の仕事が終わったのは、10時を少し回ってからだった。店を出てきた瑞樹を、千佳は笑顔で迎える。いつもは千佳よりも大きい笑みを返してくれる瑞樹。でも、この夜の瑞樹に笑顔はなかった──。

「まだ通知設定直してないでしょ?」
  千佳は悪戯っぽく責める目を作り、瑞樹の顔をうかがう──。

  「あ……うん。面倒だし」
  「非通知のままだと、今度から電話出ないよ?」

  千佳の言葉に「あぁ」と小さく瑞樹は答える。丘の上の公園に街灯が灯り、周囲の桜を浮き上がらせている。「瑞樹……」千佳が呼び掛けると同時に瑞樹も声を発する。「今夜は……」二人。黙る。同時に「何?」と言い、また黙る。瑞樹が、息を軽く吐いて言う。「今夜、泊めてくれるか?」唐突な瑞樹の言葉に、千佳は返事を探す──。

  沈黙に耐えられなくなり「うち、に?」と今さらの言葉を返す。「ダメ、か?」瑞樹の目は、ずっと隣の千佳を見つめる。ビルの影に桜の木が隠れ、二人の歩みまで遅くしていった──。

  「いいよ……」

  千佳が呟く。ゆらりとした風。遠くに。互いの肩が触れる。指先に磁力が宿る。どちらともなく、絡ませる。そして、繋ぐ。俯き加減の瑞樹を、千佳はただ、見る。小さなドア。鍵音。狭い玄関に脱ぎ置かれた瑞樹の靴が、一際大きく見える。

  夜が、来る。二人の隙間に、夜が、来る。簡単な食事を済ませ、先を譲り合いシャワーを済ませる。ベッド。並んで、座る。無言が沈黙。沈黙が静寂。千佳が言葉を選ぶ。

  「どううしたの?いつもと違う……よ?」
  初めて見る、瑞樹の濡れた髪に、心臓がやけに忙しい。
  「千佳……」
  瑞樹の手が、千佳の頬を包む。千佳から高い位置にある瑞樹の唇が、静かに下りてくる──。

  柔らかくも、どこか荒れた瑞樹の唇が、触れる。背筋を伝う、神経の逆波。一旦、離れた唇が、再び触れる。唇を、差し出すように、互いの柔らかさを確かめあう。キス……想いと熱を伝える、キス……。瑞樹が千佳との間に隙間を作る。

  「俺、今の店に就職する」
  目で、千佳は頷く。
  「新しい店、出すんだ。その店長やってみないか、って」
  「よかったね」千佳の包むような優しい声。
  「しばらく、会えなくなる……」

  瑞樹が任される新しい店は、今みたいに到底会える距離でなかったし、行き来するにも充分な時間を要する、二人が全く知らない街に構えられる。千佳の顔が、曇る。戸惑う。

  「でも、俺……好きだから、千佳のこと……ずっと」
  千佳の涙。瑞樹の大きな手。拭った涙が、指で光る──。


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