ARM?
エッチな官能小説集
「ぐぁ……っ」
走ってきた俺は──状況がよくわからないまま、飛び込んでいた。
ギターが滑り込んだ俺の背中に当たったのだ。
重量感あふれるそれは、まるで石のようだった。
「何すんだお前……がふっ!」
俺は痛みをこらえ立ち上がると、
ギターを投げつけた男を殴りつけた。
「てめえらこそ何やってんだよ……はぁ、そんなに楽しいかよ、人の夢をブチ壊すのは!」
フラフラになりながら俺がそういうと、もう一人の男は、
みさきから手を離し、俺に向かってきた。
「そんな怪我して、俺に刃向かうなぁ!」
男は俺に殴りかかってきた。
……男の横から拳が飛んできた。
その一撃で男はのびてしまった。
あいつだった。
店から飛び出してきたのだろう。
音符つきのエプロンをしたままだ。
「まったく、無茶だけは相変わらずだな」
「はっ、お前に言われたく……っ」
言いかけて倒れる俺──。
薄れゆく意識の中、俺が聞き取れたのは、みさきの声だった。
「ごめんなさい、ごめんなさい」
何で謝るんだよ。
謝るのはこっちだよ。
目が覚めると──俺は病院のベッドの上でうつぶせに寝ていた。
「打撲と……内出血だそうだ。まったく、心配かけやがって」
強がっていたが、友人は目を真っ赤にしていた。
その隣にはみさきが居る。
「ごめんなさい、私のせいで」
「みさきちゃんのせいじゃないよ、こいつがこんな」
俺の背中を遠慮なしにバンと叩く。
「痛てぇー」
「無茶するから」
「それが怪我人に対する態度かぁ……そうだ、ギターは?」
俺が訪ねると、友人は笑いながら──。
「お前の犠牲の甲斐あって、損傷はちょっとだけだよ。ウチですぐに治るぜ」
「そっかぁ……よかった」
俺は──心からホッとした。
「本当に……どうしてあんな無茶したんですか?」
みさきに訪ねられ、俺はこう答えた。
「いや、あのギター、かなり使い込んでるから、よっぽど大事にしてるんだと思ったら……身体が勝手に」
「バカ!」
病院内にみさきの怒号が響いた。
「ギターが壊れたって直せるけど……もし当たりどころが悪かったら、死んでたかもしれないのに!」
確かにそうである──あのギターが頭にでも当たっていれば、ぞっとする。
「でも、放ってはおけなかった。夢が壊れる姿なんて見たくなかった。」
「バカ……」
さっきよりトーンダウンしたみさきの声だったが、何より胸に響いた。
「あーあ……これでバイト先もクビだろうな……しばらく行けそうもないしな」
「ね、聞いたんだけど……もしよかったら……私と組まない?」
みさきの提案は、俺を驚かせるには十分だった。
「え?」
「ワリイ、昔お前がヴォーカルしてたこと、みさきちゃんに話しちゃった。」
なんとまあ無責任な奴。
「だめかな?」
「昔の話だからな……あんまし自信ないな」
「ウソつけ、最近まで諦めきれずに発声してたくせに」
「ばっ……お前なぜそれを」
「じゃあ決まりね!そう言えばお兄さんの名前は?」
「ユウ……漢字で"悠"って字だけど」
みさきがポンと手を叩く。
「それじゃあ、ユニット名は……みさきの"M"と悠の"YU"、それに複数系の"ズ"を付けて」
みさきが紙に何かすらすらと文字を書いている。
「Myu?z!ミューズって読むんだよ。これで決定!」
な……なんて強引な……紙に書かれた大きなロゴ……。
まあいっか……しばらくはやりたいことをやってみるか。
これが、後に俺の運命を大きく変えることとなるきっかけの始まりである。
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