水色の空
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耳障りな錆びた音を立てて、
重く冷たい鉄製であろう灰色の扉が開く。
―――誰もいない。
菜摘子は、周囲に人の姿が見えない事を確かめると、
水色の空と、微かに初夏の香りを含んだ風に目を細めながら、重い扉を閉めた。
屋上。
菜摘子の通う高校の校舎である。
まだ昼休み前なので、屋上に一人きりであろう事は、初めからわかっていた。
日にさらされて熱く乾燥したアスファルトを、気だるそうに歩く。
万一の事故のためか自殺防止か、
空と屋上の境界に立てられた、錆びた水色の網目状のフェンスに、両の指を絡めて、
下方に広がるグラウンドを見る。
何年生かはわからないが、男子生徒達がボールを追いかけている。
甲高いホイッスルの音と、大きな声が響く。
―――何が、楽しいの。
一瞬、強い風が吹いた。
もうすぐ腰に届くであろう、毛先をまっすぐに切り揃えられた黒髪と、
膝が覗く程度に短くされた濃紺のプリーツスカートが風に遊ばれる。
風のいたずらに腹を立てたのか、何か気に入らない事があるのか、
左の眉根を歪ませた。
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